あえての986という選択。新型ボクスターと比べて旧型が持つ魅力とは?
ポルシェのオープンスポーツといえば「ボクスター」。現行モデル(718ボクスター)は最新のテクノロジーを備え、洗練された完成度を誇ります。しかし今、あえて初代ボクスター「986」を選ぶ愛好家が増えています。新型より古いのに、なぜ986が再評価されているのか──そこには最新モデルにはない“味わい”と“原点回帰の魅力”が隠されています。この記事では、986ボクスターが持つ独自の価値を新型と比較しながら掘り下げます。
1. ピュアスポーツとしてのシンプルさ

986ボクスターは、電子制御がまだ最小限だった時代のポルシェ。トラクションコントロールやステアリング補助が控えめで、ドライバーが直接マシンを操っている感覚を得られます。
現行718ではターボ化と電制システムの進化により高性能化した一方、クルマが“完璧すぎる”と感じることもあります。986には「自分の腕で走らせる」感覚があり、機械との一体感を求める人にはむしろ魅力的に映るのです。
2. フラット6自然吸気の鼓動

986最大の特徴は、今や希少となった自然吸気フラット6エンジン。
2.5L/2.7L/3.2Lのいずれも官能的なサウンドを奏で、アクセルを踏み込むほどに澄んだ回転フィールが味わえます。
718以降は排気量2.0L・2.5Lのターボ4気筒が主流となり、性能は向上しましたが「サウンドとフィーリングの楽しさ」は986のほうが圧倒的。機械的でナチュラルな回転音は、今の時代では再現しにくい魅力です。
3. ボディサイズと軽快感

986は全長4.3m、車重約1,250kgとコンパクト。
最新718ボクスターが1,400kgを超えるのに対し、軽量ボディによるヒラリとした身のこなしは初代ならでは。
小さな峠道や街中でも“軽快に動くスポーツカー”として扱いやすく、「スピードを出さなくても楽しい」感覚を味わえます。
4. デザインに宿る90年代ポルシェの香り
涙目ヘッドライトに代表される986のデザインは、当時賛否両論ありました。しかし今見ると、どこかクラシカルで可愛らしい。
現行718や981がシャープで攻撃的なデザインなのに対し、986は曲線的で優しい印象を持ちます。この“ちょっと懐かしいポルシェ顔”に惹かれて、再び旧型に戻るオーナーも増えています。
5. 維持費と入手性のバランス
986は中古市場で100〜200万円台から購入可能。状態の良い個体を選べば、維持費を含めても新車価格の数分の一でポルシェライフを楽しめます。
確かにIMSベアリングや冷却系などの弱点はありますが、専門工場で整備すれば長く乗り続けることは可能です。
一方718は車両価格で1,000万円近く、維持費も桁違い。**“ポルシェを日常に持ち込める現実的な選択肢”**として、986の存在は大きな意味を持っています。
✅ まとめ
- 986は電子制御が少なく「人が操る楽しさ」を味わえる
- 自然吸気フラット6のサウンドと回転フィールは唯一無二
- 軽量コンパクトで、走りの感覚がダイレクト
- デザインはクラシカルで個性があり、今や希少価値が高まっている
- 維持費を抑えてポルシェの本質を楽しめる“原点の一台”
最新の718が「速さと完成度」を象徴する存在なら、986は「感性と原点のポルシェ」。
あえて古い986を選ぶことは、スペックでは測れない“人とクルマの関係”を取り戻す選択といえるでしょう。